仏教において、素盞鳴尊と対抗できる荒ぶるご本尊といえば、不動明王をおいて他にありません。
なにしろ密教の中でも力技を駆使して教えを説く教令輪身(きょうりょうりんじん)の化身でもあるので、その姿はまさに異様、髪は逆立ち、表情は憤怒、法衣は片袖を破って結び、背中には迦楼羅焔(かるらえん)の炎が燃え盛っています。
さらに両手には悪を縛り上げ、煩悩に抜け出せない人々を縛り上げる羂索(けんさく)と魔を退散させ、人々の煩悩や因縁を断ち切る降魔の三鈷剣を持つという出で立ち。
不動明王のエピソードとして有名なのが、仏陀に対抗意識を燃やす大自在天(ヒンドゥー教のシヴァ神)を召喚する時の話。
大自在天は神の頂点に君臨するという慢心があったことから仏陀の召喚に応じず、不動明王が仏陀の使いとして訪れた時も不浄の結界を張って近寄れないようにしました。
そこで不動明王は不浄金剛を呼び、不浄を喰らい尽くさせて大自在天を仏陀の元に連行、不動明王は仏陀の命によって一度踏み潰し、それから蘇生させ、仏陀の存在を教えこませます。
魔を退散させる三鈷剣や不浄を物ともしない強引な行動、まさに強力な素盞鳴尊の対抗馬といえるでしょう。
不動明王をご本尊としているお寺は千葉の成田山新勝寺や東京の金剛寺など、各地にあります。