火事場の馬鹿力、よく聞く言葉です。
家が火事になった時、普段は歩くこともおぼつかない高齢者が飛び出してきたとか、現金のたっぷり入った金庫を担いで出てきたとか、主婦が子供3人を抱きかかえて逃げてきた、というように、およそ普段では有り得ない力を発揮した場合に使われる言葉ですね。
超人的な力です。
これは喩え話であって、実際にそんな超人的な力を出すことはできない、そう思う人もいるでしょう。
でも、状況によっては誰でも超人になる可能性を秘めているのです。
医学的見地から言うと、筋肉の力は断面積に比例しており、なんと1平方cm辺り最大で10㎏に耐える出力を持っています。
成人男性の腕筋の断面積は平均25平方cmですから、計算上は片手で250kg、両手なら500㎏に耐えられることになります。
ハンマー投げの室伏選手ぐらい筋肉があれば、軽自動車ぐらいは持ち上げられそうです。
では、なぜその筋力を普段、使うことができないのでしょう?
答えは簡単。
脳から筋肉に規制の指令を出しているからです。
リミッターなどと呼ばれていますね。
限界までの力を出してしまうと筋肉を痛める可能性があるので、意図的に力を制限させているのです。
リミッターによって制限されている筋力は個体差があるものの、全開時の2割程度というのが一般的といいます。
けれど火事になれば、いえ、火事だけでなく生命的な危険にさらされた時、脳は一時的にリミッターを外して筋力を全開にするのです。
火事場の馬鹿力、けっして喩え話ではないのです。