スポーツでは、片方のチームに『ツキ』があったからといって、片方のチームに『ツキ』がなかった、というわけではありません。
前述の徳山商工と誠英の試合を振り返ってみましょう。
誠英は試合時間の残りわずかのところで、63対63の同点からフリースローを2本決めて徳山商工を引き離しました。
フリースローも何千回、何万回と練習しても必ず入るというわけではないので、ここでも確率が生じます。
たとえ2本の猶予があったとしても、高校総体の決勝、しかも同点という状況の平均値は個人として求めることができないため、偏差が極端に高いシュートであることは誰でも想像がつきます。
これを2本、見事に決めた要素の中には『ツキ』も含まれているのです。
もし、徳山商工の逆転3ポイントシュートがなければ、この2本のフリースローがクローズアップされたに違いありません。
確かに徳山商工の逆転シュートにしても誠英のフリースローにしても『ツキ』の要素は含まれていて、勝敗の行方を左右したかに思えますが、本当の勝敗は終了間際になっても両者が同点であった、というところに凝縮されています。
『ツキ』がなくて負けたのではなく、『ツキ』に左右されてしまうほど両校の平均値が接近していたわけです。
『ツキ』で勝負を左右されないためには、相手を圧倒できるくらいまで平均値を上げる以外、方法はないのです。