一般消費者まで走った絵画投資

1989年、富士銀行とセゾングループの信販会社クレセゾンは絵画担保ローンを始めます。

これは絵画購入用ともいえる融資で、融資額は絵画流通価格の8割と定められましたが、その流通価格を判断するのは同じセゾングループの西武百貨店という、まさに価格なんてあってないようなもののローンシステムでした。

本来は絵画商やコレクターが利用するローンシステムですが、これに飛びついたのがバブル景気に浮かれる一般消費者。

すでに絵画は投資目的として十分な価値があるという風潮が世の中に蔓延していたので、高騰する土地を持たないサラリーマンを始めとして一般消費者がこのローンを利用します。

しかしコレクションではなく投資目的なので絵画の知識なんてありません。

言ってみれば株投資家よりも騙しやすい素人です。

画商の「必ず高騰する画家です」とか「印象派の隠れた名作です」なんて言葉に踊らされ、二束三文の絵画が飛ぶように売れました。

富士銀行はこの融資によって500億円を半年で集めました。

それらの絵画が今、どうなっているのか知る由もありません。

願わくは絵画をとても好きになった人の家に、ずっと飾られていることです。

オートポリスや故・齋藤了英氏の件はまさに氷山の一角。

日本が86年に輸入した美術品の総額は700億円前後、しかしバブル景気が崩壊を迎える90年には6146億円まで跳ね上がっています。

いかに一般消費者まで絵画のバブルに踊らされていたか如実に分かる数字です。

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