バブル景気の時代、世界的名画がオークションに出され、それらをジャパン・マネーが席巻しました。
相場よりも高い価格で落札する日本は異常、と世界中から批評されましたが、それ自体はたいしたことではありません。
第一次世界大戦でヨーロッパが経済的疲弊を抱えていた時、アメリカはまさにバブル景気真っ最中、狂騒の20年代と呼ばれていた時代で、ヨーロッパ市場に乗り込むためにヨーロッパの負債に大きな投資を実施、その際には経済的疲弊をいいことにヨーロッパの文化的遺産を大量に買い込んだことがありました。
要するにバブル景気で国内需要が賄えるようになった後は、どこの国でもやっていることは一緒ということですね。
しかも美術品は定価がありません。
どうしても欲しい絵画があり、他の人が100億円で購入を希望した時、101億円出しても買いたいとなれば、欲しい人に取って101億円の価値があるわけです。
ジャパン・マネーで購入したことでもなければ相場を上げたことでもない、そうなるとどこに問題があるのか、と疑問に思う人もいるでしょう。
では、日本の中でゴッホの「ひまわり」を見た人が何人いるでしょう?
「ピエレットの婚礼」は?
「医師ガジェの肖像」は?
その他、多くの購入された絵画の実物を見た人はどれほどいるでしょう?
もし、これらが純粋な個人資産で購入されたものなら他の人が見る権利を主張するのは間違っていますが、バブル景気で得た利益を個人の趣味に当てるというのがそもそも間違いの元。
これらの絵画が多くの人の目に振れることがあれば、絵画購入の意義もまた違っていたでしょう。