「神話シリーズ」カテゴリーアーカイブ

史実が少ないほど創作性は高まる

実在した人物を物語にする場合、史実が多いほど拡大解釈は難しくなります。

逆に、史実に残る記録がわずかであるほど、物語としては創造性を高めることができるわけですね。

その意味で、アーサーは「ブリトン人の歴史」を始め、わずかな記述しか残っていないために伝説を想像によって膨らませることができた人物といえます。

話はそれますが、わずかな史実から創造性を膨らませた日本の物語で秀逸なのが、故・隆慶一郎氏が描いた前田利益の生涯「一夢庵風流記」でしょう。 続きを読む 史実が少ないほど創作性は高まる

まとめ的存在の「アーサー王の死」

その後のヨーロッパ騎士道物語に大きな影響を与えた「ブリタニア列王史」ですが、これを読んだ限りではアーサー王のエピソードで有名なシーンが出てきません。

固い石に突き刺さっていた剣を抜くシーンもなければ円卓を囲んだ騎士たちの話もなく、聖杯を探しに行く物語もないのです。

じつはこれらの話、「ブリタニア列王史」をベースにして作られたエピソードで、同時多発、あるいは継続、それからスピンオフとして描かれたいくつもの散在している物語なのです。 続きを読む まとめ的存在の「アーサー王の死」

剣を抜く時はアーサー若干15歳

アーサー王物語、最初にご紹介するのはご存じ、剣を抜くシーンから。

アーサーはペンドラゴン王が横恋慕して略奪愛となったイグレーヌとの息子。

この辺りは「ブリタニア列王史」と変わりありませんね。

違ってくるのは、ペンドラゴン王が魔法使いマーリンの手によってイグレーヌの夫であるゴルロイス公に化けて密通するところから。

マーリンはペンドラゴン王がゴルロイス公に化けたいという願いを聞く代わりにある要求を突きつけます。 続きを読む 剣を抜く時はアーサー若干15歳

新しい王となったアーサー

義兄ケイに同行してロンディニウム(現在のロンドンですね)までやってきたアーサーですが、槍試合大会で剣の試合に出場するケイはなんと大切な剣を宿に忘れてきてしまいます。

ケイに頼まれて宿まで剣を取りにきたアーサーですが、すでに宿の主人は槍試合見物(当時の槍試合は地域におけるビッグイベントでした)に出かけてしまい、宿には入れず仕舞。

そこでアーサー、大聖堂前に剣があったことを思い出し、大聖堂前に駆けつけるとあっさりと剣を引き抜いてしまい、ケイに代替品として渡します。 続きを読む 新しい王となったアーサー

エクスカリバー登場

アーサー王が引きぬいた剣はさまざまな名称で呼ばれています。

「ブリタニア列王史」ではカリブルヌス、940人のサクソン人を倒したという「ブリトン人の歴史」ではカリバーン、そしてマロリー著「アーサー王の死」ではエクスカリバーとなりました。

まあ、アーサー王物語はケルト語に始まり、ラテン語や英語、フランス語それぞれで物語が作られているので呼び名が変わるのは当たり前の話、ギョームがウィリアムになるようなものですから、日本人としてはあまり名称に突っ込む必要はないでしょう。 続きを読む エクスカリバー登場

「湖のランスロ」登場

湖の乙女はアーサー王とエクスカリバーのシーン以外にも少しですが重要な役割を担って登場してきます。

それはのちに円卓の騎士となるランスロットを18歳まで育てるという役。

アーサー王伝説におけるトリックスターといえるのがランスロットでしょう。

ベンウィックというフランスの領主だった父、バン王は即位したばかりのアーサー王を援助するためにブリテン島に遠征しますが、その隙に領土を奪われ戦死、妃のエレインは赤子だったランスロットを抱えて逃亡し、湖の畔で休んでいるところを湖の乙女がランスロットをさらってしまいます。 続きを読む 「湖のランスロ」登場

ランスロットと恋に落ちるグイネヴィア

ここからはなぜかアーサー王物語、なぜかラブコメ調でありソープオペラ調であり、日本の昼メロ(懐かしい表現ですね。要するに愛憎劇とでもいいましょうか)風にしばらくなっちゃいます。

なぜそんな風になっちゃったのかというと、単純に言えば宮廷の退屈しのぎですね。

平和な時代、戦争ものよりも恋愛ものの方が受けるのは時代を超えて変わらぬ世相ともいえます。

アーサー王物語の派生として「トリスタンとイゾルデ」や「ランスロまたは荷車の騎士」などが、このラブコメ調やソープオペラ調の代表格となり、その後の「アーサー王の死」に取り入れられたわけです。 続きを読む ランスロットと恋に落ちるグイネヴィア

ガラハッドを身ごもるエレイン登場

ランスロット、とにかくモテます。羨ましいくらいです。

ペレス王の娘、エレインは「この国でもっとも美しい」と評判の乙女ですが、その美しさに嫉妬した魔女、モーガン・ル・フェイによって魔法で閉じ込められ、熱湯の釜で茹でられるという呪いをかけられてしまいます。

これを救出したのがランスロット(ついでにドラゴン退治なんかもしちゃったりして)。

当然、助けだされたエレインはランスロットに恋をしてしまいます。 続きを読む ガラハッドを身ごもるエレイン登場

ランスロット、美女2人に板挟み

「二度と私の前に顔を出さないでくださいね!」

円卓の騎士、ランスロットと不倫の恋仲になっているアーサー王の妃、グィネヴィアは頭を下げるランスロットに厳しい言葉を突きつけます。

そりゃ不倫の恋仲とはいえ、グィネヴィアが怒るのは当たり前。

なにせランスロット、ペレス王の娘、エレインと寝てしまい、子供まで作っちゃったんですから。

ランスロット、これはエレインの策略、自分は騙されたと何度も説得、ようやくグィネヴィアの怒りを解きますが、エレインはなんとかして自分の夫にすべく、またもやランスロットを策略に嵌めます。 続きを読む ランスロット、美女2人に板挟み

ランスロット、またもやエレインと

アーサー王のフランス遠征成功の宴という席にありながら、円卓の騎士ランスロットは浮かぬ顔。

なにしろ騙されたとはいえ、自分の子供を産んだエレインと不倫の恋仲、妃のグィネヴィアが同席しているのですから。

エレインと再び床を共にさせないためにもランスロットを早く自分の部屋に入れなくちゃ、とばかり、誘うグィネヴィアに対し、ランスロットもエレインの目から逃れるために待ってましたとばかり、グィネヴィアと部屋を共にします。

喜んでグイネヴィアの名前を部屋の中、大声で叫ぶランスロット。 続きを読む ランスロット、またもやエレインと

円卓の騎士による聖杯探索

ランスロットがエレインとの息子、ガラハッドと共にアーサー王の元に戻ってからの話は聖杯探索になるのですが、じつは聖杯探索、アーサー王物語においてキリスト教プロパガンダの色が濃く、冒険譚としては面白いのですが結末がなんとも宗教っぽくていけません。

なにせ、円卓にいきなり聖杯が現れたと思ったら姿を消し、その聖杯を探すことが我々騎士団の務め、なんて円卓の騎士の1人であり、アーサー王の甥の1人、ガウェインが言い出してしまうのですから。

しかもペレス王が聞いた「エレインとランスロットの息子、ガラハッドが聖杯探索を成し得るだろう」という予言もあり、結末は予定調和みたいなものです。 続きを読む 円卓の騎士による聖杯探索

反逆の罪に問われる妃グイネヴィア

聖杯探索から戻ったランスロットは再びグイネヴィアとの密会を続けますが、同時に騒動鎮圧を婦人たちから頼まれると人がいいランスロット、勇んで鎮圧のための戦いをします。

またもやランスロットの人の良さに怒るグイネヴィア、ランスロットを宮廷から追い出すと、ランスロットへ当てつけのように他の円卓の騎士を招いて宴をします。

しかし、この宴の最中、騎士団に恨みを持つ者が毒りんごを仕掛け、円卓の騎士の1人が死んでしまいます。 続きを読む 反逆の罪に問われる妃グイネヴィア