「運とツキの話」カテゴリーアーカイブ

厄年に説得力をつけた陰陽説

江戸時代、厄年に関するダブルミーニングをつけたのは 田宮仲宣だけではありません。

随筆家、林自見の「雑説嚢話(ざっせつのうわ)」には「俗に女は33を厄とする。女は産を大厄とすれば、33の産の声を重ねるが故、厄年とする」と書いています。

また考証随筆として有名な「燕石雑志(えんせきざっし)」になるとダブルミーニングだけでなく、その上に陰陽を重ねるという説得力を加えています。

たとえば「42歳は4も2も陰数であり、読んで死となることから男性はもっとも恐れ、33は陽数が重なり、事の敗続するのを散々といい、さんざんと同訓であるから女性はもっとも恐れる」との記述が見られます。 続きを読む 厄年に説得力をつけた陰陽説

燕石雑志と南総里見八犬伝は同じ作家

前項で登場した「燕石雑志(えんせきざっし)」の著者は曲亭馬琴(きょくていばきん)という作家で、刊行したのは和漢三才図会よりも100年遅い文化8年(1811)です。

曲亭馬琴と聞いても分からない人は多いでしょうが、「南総里見八犬伝」の作者と聞けば思い当たる人もいるはず。

室町時代後期を舞台にした長編伝奇小説で、安房国里見家の伏姫と神犬八房の因縁によって結ばれた八犬士の物語は現在で言うところのSF物語で、冒険的アニメの源流にもなっている活劇です。

曲亭馬琴は 燕石雑志を刊行後、48歳から75歳に至るまでの後半生を費やし、その全体は98巻106冊から成立している大長編です。 続きを読む 燕石雑志と南総里見八犬伝は同じ作家

「ひ」を「し」と発音する江戸っ子

江戸時代の語呂合わせによるダブルミーニング、駄洒落の類は厄年だけでなく日常的な会話の中に取り入れられており、現代にも継承されているものがいくつもあります。

ここでは余談としてちょっと紹介しましょう。

たとえば物が壊れたり使えなくなったりした時、「オシャカになる」と言います。

このオシャカはご推察のようにお釈迦様のこと。

江戸時代の鍛冶屋が失敗作にこの言葉を用いました。

鋳物を作る時は当然、火を使いますが、この火が強いと鋳物は割れてしまいます。 続きを読む 「ひ」を「し」と発音する江戸っ子

蓑がないから雨で着物が濡れる

現代に残る江戸時代の駄洒落、お次はドラ息子です。

怠惰で道楽好き、放蕩を続ける息子のことですが、これは金を使い果たす、つまり「金を尽く」を「鐘を突く」に引っ掛けて用いられるようになった言葉です。

江戸時代の遊郭、吉原では軒先に銅鑼をぶら下げておき、客が入ると景気づけで銅鑼をじゃんじゃんと鳴らしていました。

もちろんお寺には釣り鐘もありましたが、やはり放蕩息子には吉原の銅鑼の方がぴったりくることから「ドラ息子」になったわけです。

無実の罪を押し付けられる時「濡れ衣を着せられる」と言いますが、これも江戸時代の駄洒落、ダブルミーニングからきています。 続きを読む 蓑がないから雨で着物が濡れる

厄年でも最高の歳を迎えた例

厄年っていうと何か悪いことが起きるんじゃないか、と考えがちで、毎年のように起きている悪いことも厄年に起きるとそれが特別の意味を持つと思ってしまう人もいるでしょう。

しかし厄年に良いことばかり起きている人もいるのです。

たとえば笑点の司会でお馴染みの春風亭昇太師匠。

一門の春風亭柳昇師匠に入門したのが男の最初の厄年となる満23歳(数えで25歳)でしたが、柳昇師匠がテレビを活動の舞台にすることが多かったことから、入門後、すぐにテレビ出演を許可され、当時はバブル絶頂期だったために仕事が次々に舞い込んだ、といいます。 続きを読む 厄年でも最高の歳を迎えた例

厄年は数え年で計算する

春風亭昇太師匠が入門したのは23歳だから厄年ではないでしょ?という疑問をお持ちの人に回答しましょう。

厄年は満年齢で数えるのではなく、女性の子宮内にいる時から計算する数え年になります。

したがって出産と同時に1歳となり、新年を迎えると2歳。

12月31日に生まれた赤ちゃんでも翌年の1月1日、つまり2日しか経っていなくても数え歳は2歳になるわけですね。

自分の年齢を言う時「今年の誕生日を迎えると◯◯歳です」という表現を使いますが、これに1歳足した歳が数え年の計算方法と覚えておけばいいでしょう。 続きを読む 厄年は数え年で計算する

厄病神には小豆の粥が効果的?

ところで、厄年に降りかかる可能性が大きくなる災厄とはどのようなことでしょう?

離婚だとか会社から解雇されるとか、食中毒とか物を盗まれるとか、確かにこれらも災いではありますが、本来の厄とは異なります。

厄、とは厄病神という言葉からも分かるように疫病を主に指します。

厄病神は疫病神とも表記されていたのが平安時代のこと。

この時代、医療は民族信仰に頼っていた部分もあり、流行病や治療不可能な重病はいわゆる物の怪(もののけ)、怨霊、悪鬼といった目に見えない存在によって操られていると思われていました。 続きを読む 厄病神には小豆の粥が効果的?

中国で自分の干支が厄年になる理由

厄年、つまり人生の中で災厄に見舞われる歳という考え方は日本古来のものだけでなく、世界各地に共通している認識で、そこには近代宗教の壁もないことから人間の根源的な認識であることが伺えます。

それでは世界各地の厄年を見てみましょう。

まずは日本の厄年の原型を作った中国から。

日本の平安時代、つまり中国では明の時代、風水や陰陽五行から厄年が割り出され、一般的には7歳から厄年が始まっていましたが、現在は自分の生まれた干支の年が厄年となっているので12年に1回、厄年が訪れることになります。 続きを読む 中国で自分の干支が厄年になる理由

韓国の厄年は3つの災難を表す三災

お隣、韓国にも厄年があり、これを三災(サムジェ)と呼びます。

歳の数え方は中国と同じく干支が厄年となりますが、異なる天は干支の年が本厄、その前年と後年をそれぞれ前厄と後厄とするので、9年毎に厄年が来る計算ですね。

ちなみに三災とは前厄、本厄、後厄があるからではなく、天から来る天災、地から来る事故、人から来る詐欺の3つの災難を表しています。

この三災に入ると八難が訪れるといい、本人だけでなく家族や友人も被害に遭う可能性が増え、さらに金銭の流出や疫病にかかるという、まさに不幸のどん底に陥る3年間と言われています。 続きを読む 韓国の厄年は3つの災難を表す三災

ヨーロッパでは泥人形が身代わりに

厄年の風習はヨーロッパに行くと各地で点在しています。

イギリスやドイツなどのキリスト教圏、トルコやエジプトといったイスラム教圏など宗教に関わらず風習として残っていることが特徴で、厄年の歳回りも下一桁で計算する、あるいは定期的周期で計算するなど基本的にはアジアの厄年とあまり変わりがありません。

厄祓いには木の実を歳の数だけ食べるという日本の節分にも似た方法がありますが、各地で目につく共通の方法は泥人形を川に流すという風習。

そこで思い出されるのがユダヤ教の伝承に登場するゴーレム。

作った主人の命令に忠実な泥人形で、厳格な制約を守らないと凶暴化する怪異ですね。 続きを読む ヨーロッパでは泥人形が身代わりに

厄祓い最強の神様といえば素盞鳴尊

厄年でも災厄は起こるものだし、逆に物事が好転することもあります。

それでも気になる人は神社仏閣で厄祓いや厄落としの祈祷をお願いしましょう。

神社仏閣には厄祓いをしてくれる神様やご本尊が祀られています。

まずは厄祓いに効果を発揮する、これらご本尊について説明しますね。

まずは日本神話におけるスーパーヒーロー、素盞鳴尊(スサノオノミコト)。 続きを読む 厄祓い最強の神様といえば素盞鳴尊

シヴァ神も踏み潰す強力なパワーを持つ不動明王

仏教において、素盞鳴尊と対抗できる荒ぶるご本尊といえば、不動明王をおいて他にありません。

なにしろ密教の中でも力技を駆使して教えを説く教令輪身(きょうりょうりんじん)の化身でもあるので、その姿はまさに異様、髪は逆立ち、表情は憤怒、法衣は片袖を破って結び、背中には迦楼羅焔(かるらえん)の炎が燃え盛っています。

さらに両手には悪を縛り上げ、煩悩に抜け出せない人々を縛り上げる羂索(けんさく)と魔を退散させ、人々の煩悩や因縁を断ち切る降魔の三鈷剣を持つという出で立ち。

不動明王のエピソードとして有名なのが、仏陀に対抗意識を燃やす大自在天(ヒンドゥー教のシヴァ神)を召喚する時の話。 続きを読む シヴァ神も踏み潰す強力なパワーを持つ不動明王