京都の伏見稲荷も招き猫の発祥地という定説を持ちますが、調べてみると、少しばかり前三説とは異なっています。
伏見稲荷のある稲荷山の土は元々、持ち帰ると稲荷大社のご利益があるといわれており、古くから伏見稲荷周辺の住人は土を丸めて粒状にして売っていたそうです。
そのうち、土が土器になり、やがて土鈴や牛、馬などの土人形に変化、そのうちのひとつが右前足を耳まで掲げた猫だったというわけ。
ただ、伏見稲荷には養蚕の神様が祀られており、猫は蚕を食い散らす鼠の天敵であることから崇められ、同じ土人形でも養蚕の守護神として扱われていました。
伏見稲荷には全国からお参りに訪れ、帰りにはこの猫の守護神土人形をお土産に求めることから全国に猫の土人形が広まったといわれます。
養蚕の守護神だった猫の土人形はいつしか、割れたら田畑に入れると作物がよく育つという風習が生まれ、五穀豊穣の信仰ともなっています。
この辺りが招き猫の前段階といえなくもありません。
伏見稲荷の周辺で売られていた猫の土人形、当時のものは現存していませんが、現代の作品を見ると、もちろん招き猫そのものの顔立ちやポーズが主役ですが、なかには稲荷らしく狐のような顔つきの招き猫もいます。
伏見稲荷は招き猫発祥の地、というよりも発祥までの種子、という感じですね。