江戸時代に隆盛を誇った今戸焼きは日用品に使う陶磁器も製造していましたが、とくに有名なのが瓦や鉢などの土器。
なかでも土人形は縁起物や子供の玩具として数多くの種類が生産されています。
そのなかのひとつが丸〆猫、つまり招き猫。
確かに今では今戸焼きにこだわらなくても意匠がないので、日本全国、焼き物だけでなく樹脂製だろうが金属製であろうが、誰にでも量産、販売することが可能で、誰でもいつでも、今戸に出かけなくても、インターネットの通販でも手に入れることができます。
そして、この現状は丸〆猫を大量生産していた今戸焼きを文献の中に閉じ込めることにもなります。
実際、今戸に現存する今戸焼きの窯は1軒しかありません。
今戸焼きの氏神様である今戸神社、果たしてこのまま今戸焼きを根絶させてもいいものか?とお悩みになったことでしょう。
もしかしたら、最初に丸〆猫を販売した老婆が神主の枕元に立ってお告げをしたのかもしれません。
今戸焼きを絶やさぬよう、ここを招き猫の発祥の地とせよ。
などと言って。
真偽はともかく、今戸神社が招き猫発祥の地である、と言い続けることによって今戸焼きの存在は文献の中ではなく、現実の中で生き続けます。
ちなみに今戸でただ1軒の創業500年を誇る「今戸焼」では、現在、今戸焼招き猫が品切れとか。
商売繁盛を願っています。