Categories: 招き猫

江戸庶民の土器を支えた今戸焼

招き猫の発祥の地、として名乗りを上げた今戸神社ですが、残念ながら古書、文献の類から両者の関連性は見つかっていません。

だからといって完全に無関係、というわけでもありません。

老婆が浅草三社権現鳥居のそばで販売した招き猫は丸〆猫と呼ばれ、現在でも台東区に地名を残す今戸で焼かれた今戸焼き。

その氏神様が今戸神社だったわけですね。

この今戸焼き、地元の土器、陶磁器を賄う日用品の窯であると同時に江戸を代表する窯でもありました。

とくに土器は有名で、瓦を量産していた痕跡が残っています。

歌川広重の代表作「名所江戸百景」でも「隅田川橋場の渡し かわら窯」のなかで、浅草橋場町と呼ばれた一帯に窯があり、煙が立ち上る光景が描かれているので、日常的であると同時にそれだけ繁盛していたことが伺われます。

その繁盛期を伝えるのが今戸神社に奉納された狛犬で、台座には詳細な銘文が刻まれており、今戸職人と世話人、42名の名前が記されています。

つまり、一対の立派な狛犬を神社に奉納できるほどの職人たちがいた、ということですね。

残念なのは、今戸焼きはその後、江戸から東京に移行した時より時代の波に飲まれて衰退、現在は今戸焼きを継承しているのは1軒しかない、ということです。

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